ミニFMアグレッシヴ運営戦略


KZI−FM 生田一宇

 ミニFMを始める時、多くの人は自分で情報を発信できるというところに魅力を感じて入門していくのだろうが、やがて「誰に向けて発信していくのか?」「発信すべき相手(リスナー)がいない」などの事情によって挫折して行くのである。所詮遊びで始めたのだからまぁいいかと思ってこの世界を後にする人は実際多い。でもやるからには続けたいと思っている諸氏諸兄もいることだろう。この稿は私自身が聞いたり、実際に実行してみたりして体得したり、経験したことを披露し、楽しく運営を続けるコツを紹介したいと思う。

@自己満足からの脱却
 「聞いてくれる人がいる」ってことと、「自分が電波を出す」ということのどちらに重点を置くかによって、ミニFMに対するスタンスが決まってくる。外向きなのか内向きなのか。まず「聞いてくれる人がいる」という状況を考えてみよう。これはミニFMでは大変ありがたい状況である。外向きなミニFMはまずはここを目指すと思う。その為のノウハウを紹介するのが本稿なのだが、内向きなミニFMにはどうでもよかったりする。
 つまり進行表を作ったり、番組表を制作してとりあえず既存の放送局のまねごとをするのがしてみたいだけだったりするのである。そのプロセスで遊びの満足度は満たされ、番組内容も、いかに自分のお気に入りの番組に近づけるかが目標となる。つまり実は発信するものを持ち合わせていないからこのようなことになってしまうのである。但し私も自己満足を否定はしない。過去も含め現存のミニFM放送局の9割以上が自己満足の追及する局だったからだ。私自身も中学生の頃の第1次ミニFMブームの頃のミニFM局はこの典型。何の為にやっているのか、「放送ごっこ」がしたいだけで内向きな趣味で終わってしまったような気がする。
 でも続けて行くには内向きでやって行くには限界があると思う。そこで具体的にどういった手段にでればよいか。
 a)ネット局を見つける(A)
 b)放送局の宣伝をする(B)
 c)リスナーを増やす(C)
 d)参加メンバーをふやす(D)
というような方策が考えられる。あくまでも自分が楽しくやりながら、こうなれたら必然的に面白くなって行く。
 勿論経験豊富なミニFMにとって何を今更ということかもしれないけど、根源的な問題であり、なぜ続けるのかというところを改めて考えるためにも問題提起させてもらいたい。わたしはあるネット局と「自己満足」という観点で意見が食い違いネットを打ち切った苦い経験がある。既存局のジングルを使ったり、天気予報を差し込んで本物の放送ぽく見せる番組づくり。これははっきりいって私の目指す方向性とは全く逆方向の番組づくりである。まぁ人それぞれ、いろいろな考えでミニFMやってるんだからとやかく言うつもりはなかったが、片側ネット(相手局は電波を現在出していない制作のみの局だった)なのにMD代はうち負担、放送時間も指定してくるというところまでは目をつぶったが、こちらのささやかな注文に大クレームを入れてきたところから手紙上で論争になり(相手局の手紙はA4裏表に小さい字でビッチリ印字された手紙。めんどくさいので電話で話ししたかったのだが、知らない人とは電話では話せないということで)最早かかわりたくないということでネットを打ち切った。世の中にはいろんな人がいるんだなぁと感心してしまった。勿論私にも非はあるのかもしれないが、やはりネット局に放送してもらうにはそれなりの礼儀というものが必要だと思う。「放送してもらっているんだ」という気持ちさえあれば、良好な関係は普通築けると思う。相互ネットする際は自分のところの局の番組をアピールするだけではなく、相手局の番組にも関心を払ってあげるべきであると思う。

Aネット局の見つけ方
 さて話が前後してしまったけれども、ネット局をどうやって捜すかという問題を解決せねばなるまい。このサイトにはいろいろなミニFM局のデータを集めると共にHPのリンク集もあるので、アクセスしてネット局になってもらうというのもいいだろう。このような形で本サイトが媒介になってくれればという思いで制作しているので、是非利用して欲しい。やみくもにネット局を増やすのではなく、「ネット局を見つけて自分が何をしたいのか」をはっきりした上で募集したほうがいいと思う。ネット局が1局増えれば、負担は倍増すると覚悟して欲しい。番組をダビングして、手紙を書いて送るという作業がネット局1局増えるごとに作業時間が倍倍になっていくからだ。それでも増やしたいというのは何らかの情熱が無いと出来ない作業であることは断言できる。「自分の制作する番組を一人でも多くの人に聞いてもらいたい」あるいは「いろいろなバリエーションの番組を集めて編成に面白みを持たせたい」のか…。自主制作番組の交換というのが一番自然なパターンだろう。相手局の番組を聞いて自分には今までなかったことが発見できるかもしれないし、又自局制作番組について意見がもらえるかもしれない。ネット局はネット局でもあり、一リスナーさんでもあるのだ。こうした意識を持つことによって、楽しみがグンとアップすると思う。
 次に私がネット局を募集する手段として使った方法を紹介しよう。まず媒体誌の利用。FMなんだから「FM FAN」だろうということで、唯一残っているFM誌の読者コーナーの掲示板を利用したことがある。全国で発売されている雑誌なので、遠いところからの反響も期待できる。但し読者の年齢層をチェックしてみると結構高かったりする。「ラジオの製作」にはBCLのコーナーがあって、かつてこちらで募集をかけたミニFM局もあったようだ。年々媒体力が落ちているようで、反響も下降線をたどっている模様。
 「ラジオライフ」はすごく反響があった。じつはこれには複線があった。「ラジオライフ」に以前あるサークルが全国のミニFMから番組を募って交換しようという企画を出していて、たまらず食いついたんだけど参加局が少なすぎて見合わせられたという苦い経験が土台にあった。だったらしっかり運営しているミニFMがまだあることを満天下に示し、新たなるネット局を募ろうということで「ラジオライフ」編集部に直接営業をかけた。すると割とアッサリと取材に来てくれた。但し出来あがった原稿はご存知の方も多いと思うが、あたかも滅び行くメディアとして悲劇的主人公に祭り上げられた内容になってしまっていたのがもどかしかった。ただ反響はすさまじく、本来の目的のネット局の依頼から、激励、テープリスナー希望、受信報告といろいろな形で20件ほどあった。年齢層は割と低く高校生や大学生の方からの反響が多かった。つまり第1次ブームを知らない人たちが興味を持ってくれていることが確認できた。つまり楽しいものであると教える何かがあれば、潜在的に広まる可能性はまだまだ秘めている娯楽であると思う。どんな形であれ存在を示せたというのは大きかった。

B放送局の宣伝の方法
 雑誌媒体に告知するのもひとつの宣伝方法だろうが、リスナーの獲得にはあまり繋がらない。なぜならミニFMの宿命、放送エリアの狭さが問題で「聞きたい。どうやったら聞こえるのか」という問い合わせに対して「近くまで聞きに来てくれ」という答えしか返せないのである。
 そこで考えられるのが地域に絞って宣伝していくという方法論である。町の掲示板なんかに貼り紙をはるなんて行動が最も原始的だが、効果はあると思う。それからチョットしんどいが集合住宅では効果的なのは、チラシの頒布。チラシをつくるコストと配る労力は大変なものがあるが、素敵なデザインのフライヤーが出来れば相当注目度は上がるだろう。自治会発行の新聞なんてネタに窮してるはずだから、素晴らしいネタになると思うので結構アッサリと取り上げてくれる。勿論これよりもうひとつ上のレベルのコミュニティ紙、タウン紙、フリーペーパーなどもよいだろう。気をつけなければならないのが、そういった媒体の読者層である。読んでる人はお得な情報を目を皿のようにしている主婦が中心で、ミニFMの目指すターゲットとアンマッチを起こす可能性が大きい。やみくもに載せられるものには載せてしまえと思う前に媒体のマーケットを考察してみよう。さて、いろいろな方法論を示してみたが、大切なのはひとつ試して効果が無くてもあきらめないこと。なくて当然くらいの軽い気持ちで挑戦するのが望ましい。そしてひとつだけ試すのではなく、合わせ技でチャレンジしてゆき、効果をだしていくことも必要だろう。人間ひとつの媒体で目に入っても、大して気にもとめないものが、ふたつめを見たときにサブリミナル効果で注目することがよくある。あきらめずに不特定多数のリスナーをゲットするために努力して欲しい。最後に特定したリスナーをつける「秘策」を伝授しよう。自治会や周辺コミュニティに協力するのである。例えば商店街をバックにつけるなどは過去に類例がいくつか見られる。商店のCMを入れるかわりに、商店にミニFMの番組表を貼ってもらったり、FMのCMを聴いて店に来たお客に割引を施すなどすれば効果的なタイアップが計れると思う。商業的なのがいやであれば、地元の少年野球チームを応援するというのはどうだろう。「今週のベアーズ」などの番組を作って活躍している少年にインタビューするなどすれば、少年野球チームのメンバーやその友達、家族はまず聴くだろう。そこから口コミで少年の上の兄弟、その友達と広がれば地域の誰もが知っている放送局になるかもしれない。
 そこまでバラエティー色を打ち出せない、うちはあくまでも音楽専門局というのなら、地元のレコード店やレンタルCDショップなんかと協力してはどうだろうか。お店の売れてるCDベスト10を「○×町HOT10」とか番組にしてしまうとか…。
 あるいはインディーズのバンドとタイアップして番組を制作し、そのBANDの認知度向上に協力、逆にライブでチラシを挟み込ませてもらえば、放送局の知名度も上がるというもの、これもオススメの手法である。
 ここまで活動の幅を広げれば、新しい出会いなんかもあって、人間的にも成長できる可能性がある。又地域の人たちから感謝されるかもしれない。そうなれば運営にも責任感が出てきて、あなたのミニFM局は確実に1段階ステップアップするだろう。

Cリスナーを増やす
 前項の放送局の宣伝をすればリスナーは増えるが、ここではもう少し違う方法論を考えてみよう。前項は「不特定多数」のリスナー獲得の手段だが、「特定少数」のリスナーを確実にものにする作戦である。ずばり「テープリスナー」を作るという行為なのだが、本来のミニFM局の目的が当然電波を出すことにあるわけだから、これはそれとはかけ離れた行為になるので、ミニFM関係者の中には「それは違う」と唱える人も結構いた。勿論考え方は人それぞれ。それに対してあーだこーだ言うのはタブーの世界。とにかく「ひとりでも多くの人に聴いてもらいたい」という情熱がある人がやればいい行為である。メリットはエリアに関係無く番組を聞いてもらえる人を獲得できるという点、デメリットはテープリスナーが増えれば増えるほど負担が倍増するということ。ダビングという作業はカセットやMDが一台づつしかないと、(番組の時間)×(テープリスナーの人数)という作業時間を要する。ミニFM局を複数の人間で運営しているのであれば、手分けして作業した方がいいだろう。それと遠い人には郵送しなければいけないので、そのコストも頭が痛い問題である。私の場合郵送、テープ代はリスナー負担にしてもらったりしていたが、これはリスナーの方が納得してくれれば一番いい形だろう。郵送代を頂くと「いい番組をつくらなければ愛想をつかされて次回から聞いてくれないかもしれない」という、いい意味でのプレッシャーがかけられるからである。郵送用の切手同封で送ってもらっていたのが、テープリスナーさんから次の手紙が返ってくると無性に嬉しかったものである。
 それから職場や学校などで親しい人に聞いてもらう場合は手渡しできる。エリア外の人に聞かせるってことに関しては、今後インターネットラジオが、その役目をになっていくかもしれない。

D参加メンバーを増やす
 最初ミニFMを始めるとき、一人から始めるか、気の合った友人と始めるかの2パターンだと思う。勿論そのまま運営して行くのも楽しいことに違いないが、ある程度レベルアップするにはメンバーを増やすことが一番の近道だ。今までなあなあでやってきたことも出来なくなる可能性も出てくるが…。戦略的に人を増やすか、とにかくサークル活動を充実させるかによって募集の仕方はまるっきり違ったものになってくる。戦略的というのはおおげさな表現かもしれないが、つまり自分達にない部分を補強するということ。たとえば一人で生放送するのは難しい。そこでミキサーを募集してみる。あるいは番組編成上、男性パーソナリティの番組しかない。そこで女性パーソナリティの募集をしてみる。このような限定した方法で募集すると弱点補強につながると思う。
 それとサ−クル活動を充実させるために募集する場合だが、あまりに大人数になると運営に支障をきたすのは間違い無いと断言しよう。このような募集の仕方だと「一度やってみたい」というミーハーな参加者がやってきてしまう。「ここで何がやりたいのか」というものを明確に持っていない者への対処は苦慮するだろう。最初に会ったときに参加する際の注意点を話し、及びどんなことがやりたいかを聞いておき、お互いに出来そうだったら加入してもらうという手をとったほうがいい。やみくもに人数を増やし、番組もふえればそれだけ負担も増えて行く。楽しみながらどこで一線を引くかを設定し、運営していこう。メンバーが増えるとデメリット以上に、メリットはあるはずだ。内輪どうしでもテープで番組交換すれば、いろいろな(番組に対して)意見が聞ける。又人が増えれば増えた分、口コミでの宣伝力が増す。各地にネット局ができた際、ダビングや発送業務というものはネット局が多ければ多いだけ煩雑なのだが、この業務を分散することによって一人にかかる負担を軽減することが可能だ。番組をつくる時、野外でインタビューするのは一人だと気後れしがちだが、クルー体制がとれれば、される人の警戒心も解ける。普段遊ぶ際の面子が増える…。これ以外にもメリットは捜せばいくらでもあるだろう。
 注意しなければいけないのが異性問題。しかし当事者間の問題だし、注意しようがないという噂もある。又これがサークル活動の醍醐味かもしれないし…。
 募集は戦略的なケースの場合は専門誌も考えられるが、一般的には友人の紹介、個人情報誌に掲載してもらうなどの方法がある。

 いろいろなパターンであなたのミニFM局を楽しく、夢を持って運営して行くコツを紹介してきたが、このサイトのデータを活かして欲しい。全国のミニFMがあなたの番組をネットさせてほしいとラブコールを送ってきているのである。どんな放送局かという紹介とHPのリンクが貼ってある。アクションを起こせばネット局が増えヘビーリスナーの獲得に繋がるかもしれない。実際ミニFMの醍醐味のひとつに自分の地域以外の情報が流れるため、リスナーとしてはネット番組に魅力を感じるケースが多い。普通のラジオだと東京発信のネット番組ばかりだから新鮮に感じるのであろう。とにかく聞いてもらえる環境を作れば、ミニFMの楽しみは2倍、3倍にも増える。
 あとはあなたのアクション1つ。積極的に行動して、素晴らしい「ミニFMライフ」を満喫して欲しい。